子供達の「気持ち」
研究を始めた当初は子供達が興味を持ってくれるのかという心配がありましたが、どのゲームも多くの子供達と一緒に取り組むことができました。
子供達は本当に先入観がなく、思いやりを持って物事を捉えることができているなと感じました。
そう思った理由は子供達との会話にあります。「視覚障害の人を見た時にどのような気持ちになりますか。」という
質問をした時、全員「何か手伝ってあげたい」と話してくれました。保護者の方にも同じ質問をしましたが、どこか
「配慮する」という気持ちがあり、「目が見えないと何もかも辛い」というような先入観のあるような答えが多くみられました。
子供達のように自分ごとを捉えて「その人に寄り添う」という気持ちは大人になっても忘れてはならないと思います。
楽しく学べる環境づくり
まず、子供達には触覚や聴覚を使って純粋にゲームを楽しんでもらうことができました。 コンセプトの中に「目が見えないことを補うために何ができるかを楽しく学ぶ」と掲げていましたが、 これは研究活動の早い段階から実現できていたと思います。主な理由としては前項の『子供達の「気持ち」』でも触れた、 目が見えないことに対する恐怖心や先入観がなく、「できた!」という喜びを感じるゲーム作りができたからだと考えます。 また、道具として子供達と遊ぶ時によく使っていたペンやクレヨン、画用紙など文房具を使ったこともゲームを理解しやすく、 楽しいと思える要因になったと思います。このようなゲームの環境から目が見えないことを補うために触覚と聴覚を使って楽しく学べるゲーム作りができたと言えます。
視覚障害の正しい理解
もう一つのコンセプトとして「視覚障害の正しい理解や知識につながる体験をする。」と掲げていました。 ここでいう視覚障害の正しい理解や知識というのは「目が見えなくてもなんでもできる」ということです。 この研究活動では目の代わりに耳と手を使って物を見分けるゲームをしましたが、 一番成果を感じたのは子供達でアレンジしてゲームをしたり、新しいゲームを提案してくれたことです。 複数の文房具の中から手探りで探し出すゲームでは自分たちで文房具を追加して難易度を上げて遊んでみたり、 どの筆記用具で書いたか当てるゲームでは文房具を当てるゲームではなく描いた図形を当てるゲームを提案してくれました。 それぞれ、難易度が上がっても手を使えば探し出せる。違ったシチュエーションでも音を聞けば区別できる。 というように子供達自ら「目が見えなくてもなんでもできる」ということを学ぶことができていました。 子供達はここまで深く考えていないかもしれませんが、ここで学んだことはもっと詳しく視覚障害について学ぶ時に必ず役に立つと思います。
これからの視覚障害体験
今日、行われている教育機関での視覚障害体験はぜひ続けて行ってもらいたいと思います。 しかし、大事にしてほしいことがあります。それは「気持ち」を知るということです。 視覚障害者の方の生活を体験するということがただの真似事になって欲しくはありません。 現状では真似事になってしまっているため、結果的に目が見えないことに対する恐怖心が芽生えたり、 正しい理解まで辿り着けていないと考えます。視覚障害者の方がどのような気持ちで白杖をついて歩いているのか、 どのような気持ちで会話しているのか、気持ちにまで寄り添い五感という人間本来の力を理解して初めて視覚障害への正しい理解ができていくと思います。