
「耳と手で見る」とは
この研究活動は子供達が将来、視覚障害の正しい理解や知識を身につけることを目指し、「視覚を補うために触覚と聴覚を使って何ができるのか」ということを テーマに物を見分けるゲームをしています。また、子供達に馴染み深い文房具を用いてゲームを行なっています。 先入観の無い子供達だからこそ純粋に楽しみながらゲームに取り組むことができ、目が見えない世界の本質を学べるチャンスだと思います。
「耳と手で見る」のはじまり
始まりは一つの視覚障害支援ツールとの出会いでした。それは「Navilens:ナビレンス」という歩行支援ツールです。 このツールはスマホのアプリとQRコードを使う物で、QRコードに埋め込まれた情報とQRコードまでの距離が音声で読み上げられるツールとなっています。 なぜ、このツールから始まったのかというとキーワードはスマホです。私たち人間にとってスマホというものは生活に必須の物になりつつあります。 しかし、それはあくまで生活を豊かにする道具に過ぎません。それは視覚障害があっても、なくても同じです。 そう考えると私は白杖も視覚障害者の方にとってはあくまで生活を豊かにする道具に過ぎないと考えるようになりました。 ここで初めて、視覚障害を正しく理解していくためには五感を使った生活の工夫にフォーカスしていく必要があると思い、研究を始めました。
視覚障害体験の現実
視覚障害を体験できる機会はありますが、残念なことに誤った理解をしている人が多いのではないかと考えます。 実際に今日の小学校や中学校を中心に行われている視覚障害体験はアイマスクを使って児童や学生同士で介助し合う体験がほとんどです。 そのため、普段から視覚に頼って生活している人がいきなり視覚を奪われては「怖い、何もできない」という恐怖心を植え付けかねません。 街中に行けば白杖をつきながら歩いている人がいますが「目が見えないと怖いはずなのにスムーズに歩いていてすごい」 「何か手伝えることはないだろうか」と思う人もいるかもしれません。このように思うことは決しておかしなことではありません。むしろ普通だと言えます。 しかし、ただ同じ行動を真似するような視覚障害体験では学べきれていないことがあるのも事実です。 「五感」と「リアルな生活」という点に注目し、違った視点から考えてみましょう。
ゲームを通じて伝えたいこと
改めてですが、「目が見えないことを補うために何ができるか理解してもらいたい。」これが私の思いであり、活動の目的でもあります。 視覚障害を持っていない人からすれば、白杖がなければ生活できないと考えてしまうかもしれません。 しかし、視覚障害者を持っている人からすれば歩行しやすくするためのただの道具かもしれません。 両者の違いは道具に対する考え方であり、道具を使う人たちのリアルな生活に迫ることで 視覚障害とは何かについて違った視点から考えられるようになると思います。
ゲームの制作について
触覚をテーマにしたゲームと聴覚をテーマにしたゲームをそれぞれ2つ行いました。 ゲームによっては触覚も聴覚も使うものもありますが、自分の五感を研ぎ澄ましてチャレンジすることが求められます。 大人でも子供でも複数人で楽しめるゲームになっていますので、ぜひお試しください。